研究概要 |
Fisturaliaのうち、日本,インドネシア,カンボジア,韓国などアジア産の種約40種(標本総数約350点)について,形態,種内化学変異,生態学的特性について検討を行った。形態形質としては地衣体の形状,生殖器官の特徴,偽盃点の形状,皮層下部に発達するchondroid layerの形状や配置が種分化や系統関係を強く関連していることが明らかになった。また,各種には二種以上の種内化学変異の存在が確認されたが,変異の違いには1)付加的,2)置換,3)あるいは1)と2)が同時に生じるものがあることが明らかになり,地域差には関係ないことが明らかになった。 また,新しい資料が得られた日本(安達太良山,霊山,滋賀県湖北),韓国(雪嶽山),インドネシア産のFistulariaのrDNA ITS、SSU領域を用いて系統解析の結果からも他のアジア地域でこれまでに得られている結果と同様にFistulariaはカラタチゴケ属から独立した分類群ではなくRamalinaと単系統をなすという結果が示唆された。また,Niebla, Ramalinopsis, Vermilacinia に属する種類についても資料を増やして検討した結果,FistulariaやRamalinaとは系統を異にすると考えられる。 これまでの研究の結果,系統を最も強く反映する形質としては偽盃点や粉子の形状があげられる。一方,二次代謝産物,子嚢胞子,chondroid tissueなどは種を特徴つける形質,或いは種分化を強く反映する形質である公算が高い。
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