本研究ではB細胞受容体の架橋刺激の条件を設定できる実験系を構築し、糖脂質欠損によるB細胞受容体刺激の応答性の変化を明らかにすることを目的とする。平成17年度においては架橋刺激の設定のために用いるFabブリッジの作成に着手し、またGM2/GD2合成酵素ノックアウトマウスのB細胞の応答性に関する予備的な実験を行った。 1.Fabブリッジの作成 Fabブリッジの基本設計はマウスIgMに対するモノクローナル抗体のFab部分を長さの異なるリンカーでつなげたものである。モノクローナル抗体作成のためにミエローマ由来IgMのFc部分の調製を計画したが、このIgMはパパイン消化に対してきわめて強い抵抗性を示し、またペプシン消化ではF(ab')2は得られたがFc部分は低分子断片にまで分解されてしまった。IgMには多様な糖鎖付加がおこるので、糖鎖による立体障害のためにパパイン消化が阻害されたためと考えている。そこで当初の目的を変更し、IgM全体を抗原とした抗体作成をおこなうことにした。抗体作成は日本製粉に依頼中である。 2.GM2/GD2合成酵素ノックアウトマウスのB細胞の応答性 脾臓B細胞を培養すると細胞死を起こすが、その度合いは細胞の密度や血清の濃度に依存する。B細胞受容体を架橋刺激すると細胞死が回避される。予備的な実験から架橋刺激の効果には糖脂質欠損の影響がみられ、その影響の大きさは細胞の密度や血清の濃度に依存することが示唆された。
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