本研究ではB細胞受容体の架橋刺激の条件を設定できる実験系を構築することを目的とする。平成18年度においては架橋刺激の設定のために用いるFabブリッジの作成を検討した。Fabブリッジの基本設計はマウスIgMに対するモノクローナル抗体のFab部分を長さの異なるリンカーでつなげたものである。モノクローナル抗体作成のためにミエローマ由来IgMのFc部分の調製を計画したが、このIgMはパパイン消化に対してきわめて強い抵抗性を示し、またペプシン消化ではF(ab')2は得られたがFc部分は低分子断片にまで分解されてしまった。IgMには多様な糖鎖付加がおこるので、糖鎖による立体障害のためにパパイン消化が阻害されたためと考えている。そこで当初の目的を変更し、IgM全体を抗原とした抗体作成をおこなった。IgMに反応するニワトリ可変領域クローン4種類を得た。この抗体が実際にB細胞の活性化を起こせるかどうかを評価するためにラビット定常領域全長との組み換え体の作成をおこなったが、ラビット定常領域全長による非特異的な結合のためにウエスタンブロットによる評価ができなかった(マウス定常領域全長の場合にはそのような現象はみられなかったので、Fabブリッジの作成にあたり動物種の選択が重要であることがわかった。)そこで定常領域のひとつだけとの組み換え体を作成し、動物細胞で発現させてProtein Gカラムクロマトグラフィーにより精製をおこなった。現在生物活性の評価をおこなっている。
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