活性酸素によるテロメアDNAの損傷についての分光学的な研究を行なった。ESR測定法についてもフロー法やストップトフロー測定法を用いるため、大量のDNAを合成し精製した。また、いくつかのニトロン系スピントラップ試薬を化学合成し、再結晶により生成した。これらのDNAオリゴマーのラジカル化反応について解析するために、フローESRの改良を行なった。流通系は高速液体クロマトグラフ分析用(HPLC)のポンプ、6方切り替えバルブ、インジェクションバルブを採用した。フローESRセルは水溶液扁平石英セルの円筒部分内径を0.3mmに改良したものを使い、光ファイバーによる照射光がセルに到達するように、ESRセルの平面部分を調整した。UV照射光により、過酸化水素からOHラジカルを選択的に発生させることができた。これらの改良により、フローセルで構成されたフローインジェクション-ESR測定システムに照射システムを、活性酸素ラジカル種を選択的に発生させることに成功した。さらに、発生したラジカルを定量的に解析することができた。テロメアDNAの構造であるGカルテットは、結合するアルカリ金属イオンの違いにより構造変化が生じ、ラジカル反応が変化する可能性があるため、様々なアルカリ金属イオンについても測定した。この状態で核酸のラジカルによる損傷を直接測定し、その時間変化を観測した。最終的な生成物については、三次元液体クロマトグラフィーにより分取した後、質量分析やNMRにより同定中である。これにより、テロメアDNAのラジカル反応の構造特異性が明らかになり、ESRの結果と併せてDNAの損傷のメカニズムが明らかにしつつある。
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