研究概要 |
真核生物の遺伝子発現調節において,転写の抑制は重要なメカニズムの一つである。Tup1コリプレッサーは,真核生物に広く保存され,多様な生命現象を調節する転写抑制因子である。出芽酵母Saccharomyces cerevisiae, Candida albicans,分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの3種類のTup1ホモログはすべて転写抑制機能をもつにもかかわらず,転写抑制領域の相同性が低い。本研究では,これらTup1ホモログのX線結晶構造解析から,転写抑制領域に共通する立体構造を明らかにするとともに,転写抑制の標的である転写メディエーターおよびヒストンとの相互作用解析から,Tup1による転写抑制メカニズムを明らかにすることを目的とした。 まず,精製標品が得られたS.cerevisiae Tup1タンパク質の結晶化を試みた。Free interface diffusion法を用いた結晶化において微結晶の形成はみられたが,結晶をそれ以上に成長させる条件がみつからなかった。次に,S.pombe Tup11タンパク質をS.cerevisiae低温誘導発現系を用いて発現させた。宿主細胞がもつTup1との混在を避けるために,宿主細胞のTUP1遺伝子を破壊した株を構築した。この発現系を用いて十分量のS.pombe Tup11タンパク質を発現させることができた。さらに,S.pombe Tup11タンパク質の精製方法を確立し,現在その結晶化条件を検討している。C.albicans Tup1ホモログの転写抑制領域だけを切り出し,遺伝子プロモーターに強制的に結合させると転写活性化能力を示すことを見いだした。転写抑制機能が欠損したtupl変異を効率的に分離するために,増殖を指標とする新しいレポーターシステムを構築した。複数のtup1変異が分離できたので,現在それらの解析を進めている。
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