研究概要 |
1、分子量の異なるタンパク質(卵白リゾチーム:HEL,14kDa、ウシ血清アルブミン:BSA,67kDaなど)にハプテンとなる4-hydroxy-3-nitrophenyl(NP)の数を変えて結合させたものを抗原として用い、親和性の異なる各種抗NP抗体との分子間相互作用を、表面プラズモン共鳴バイオセンサーや超遠心分析法、質量分析法、電子顕微鏡などを用いて解析した。その結果、抗原のハプテン価や大きさ、抗体の抗原結合親和性と、抗原・抗体間相互作用における結合の強さ(avidityの寄与)や形成される複合体の大きさの間に相関関係が見出された。特に質量分析法と電子顕微鏡による解析では、測定手法の有効性の検証としても重要な研究課題であったが、前者では分子間相互作用をマス値として良く検出できることが明らかとなり、また後者では複合体形成を比較的簡便に可視化できることを証明した。なおこれらの成果の一部は第36回日本免疫学会総会にて発表し、現在、論文投稿も準備している。 2、いくつかの抗NP抗体について、そのFab部分を調製し、抗原存在下、非存在下それぞれで結晶化スクリーニングを行った。いくつかの条件下で微結晶が形成されたが、X線結晶構造解析を行うには不十分であり、さらなる条件検討を進めている。 3、抗HEL抗体、抗BSA抗体それぞれの抗原結合に伴う抗体の構造変化について、protein Aやprotein Gをプローブとして表面プラズモン共鳴バイオセンサーによる解析を行った。その結果、抗NP抗体で認められた現象(Oda et al.,Int.Immunol.15,417,2003)と同様の結果が得られ、抗原結合に伴う抗体の構造変化が示唆された。
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