研究概要 |
分子量の異なるタンパク質(卵白リゾチーム:HEL, 14kDa、ウシ血清アルブミン:BSA, 67kDaなど)にハプテンとなる4-hydroxy-3-nitrophenyl(NP)の数を変えて結合させたものを抗原として、さらに親和性の異なる各種抗NP抗体(IgGおよびIgM)を調製し、それぞれの分子間相互作用を、表面プラズモン共鳴バイオセンサーや電子顕微鏡などを用いて解析した。その結果、抗原のハプテン価や大きさ、抗体の抗原結合親和性や結合価と、抗原・抗体間複合体の大きさの間に相関関係が見出された。またHELのS-S結合を欠損させ、立体構造を部分的に崩した変異体を調製し、抗HEL抗体との分子間相互作用解析を行ったところ、抗体の結合速度の低下が認められた。これは抗原が抗体結合時に構造変化を必要とすることに起因すると考えられる。これらの成果は第37回日本免疫学会総会、および第45回日本生物物理学会年会にて発表し、現在、論文投稿も準備している。 上記、立体構造を認識する抗HEL抗体を対象として、そのエピトープ決定を行うべく、質量分析やX線結晶構造解析の適用を試みた。前者については、手法としても新たな取り組みであるが、酵素消化による十分な断片化に課題があり、引き続き研究を行っている。また後者については、抗原との複合体の結晶がいくつか認められたものの、構造決定時の分解能としては不十分で、さらなる改良を必要としている。
|