研究概要 |
1 ヘパラン硫酸によるヘパリン結合性増殖因子(HB-GF)シグナリングの制御 VEGFは重要な血管新生因子であり、ヘパリン結合型のアイソフォームが存在する。私たちはこれまでにこの結合にはヘパラン硫酸の6-硫酸も2-硫酸残基も必要であることを報告した(2004,J.Biol.Chem.)。さらにVEGF165による管控形成、シグナル伝達活性をヘパラン硫酸が促進すること、その活性に6-硫酸残基が必要であることを明らかにした(2005,J.Biol.Chem.)。実際に、HS6ST1ノックアウトマウスの胎盤迷路層では血管形成異常が観察されるので、このようなシグナリング制御がin vivoで作用する器官があることを強く示唆した。 HS6ST1とHS6ST2のダブルノックアウトマウスから得られる線維芽細胞はHSヘパラン硫酸の6-硫酸残基をほとんど(野生型の5%以下)合成できなかった。これらの細胞を用いてHB-GFのシグナリングにおける6-硫酸化の影響を調べ、次年度に報告したい。 2 ヘパリンの6-硫酸化機構 マスト細胞の顆粒内にあるタンパクはヘパリンと結合して保存され、IgEの刺激によって脱顆粒を引き起こし、細胞外に分泌される。従って、ヘパリンの生合成経路を解析するのは重要である。ヘパラン硫酸の6硫酸化酵素(HS6ST)は3つのアイソフォームが存在するが、ヘパリンの6-硫酸化がどのアイソフォームによって合成されるかはわかっていなかった。我々は結合識型マスト細胞が多く存在する耳を材料にヘパラン硫酸、ヘパリンの構造を解析した。その結果、HS6ST1ノックアウトマウスのヘパリン構造、含量は野生型マウスと同じであった。HS6ST2ノックアウトマウスでは典型的なヘパリン構造はほとんど合成されず、6-硫酸化構造が半減していた。これらからHS6ST2は少なくともヘパリンの6-硫酸化活性を持つことが明らかになった。しかし、HS6ST2ノックアウトマウスではまだ50%近くのヘパリン6-硫酸残基があるので、これが3つ目のアイソフォームHS6ST3によるのか、あるいは他のアイソフォームの代償によるかどうか今後明らかにすべき課題である。
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