研究概要 |
私達は、超好熱菌(P.furiosus)由来のピロリドンカルボキシペプチダーゼ(PCP)のリフォールディング速度が異常に遅いことを発見した。そして、この異常に遅いPCPのリフォールディングの速度を温度によって自由に制御できる条件、更に、この異常に遅いリフォールディング反応は、天然状態と変性状態間で非常に高い協同性をもつ2状態変性であることを見いだした。本研究では、15Nや13Cで安定同位体標識したPCPを作製し、PCPのフォールディングの初期構造の特徴をNMRの手法を用いて明らかにするとともに、このD状態のどのような構造的因子が鍵となって高い協同性を保証しているのかアミノ酸変異型を用いてCD及び熱測定などの物理化学的手法で明らかにすることを目的とした。今年度は、蛋白質のフォールディング反応を遅らせる要因として、PCPの構造から(1)N状態でのシスProの存在(Pro159)、(2)特異な天然構造(分子内部の荷電残基;Glu192)に注目した。そこで、Pro159->Ala及びVal変位型とGlu192->Ala, Val, Ile及びAsp, Gln変異型を作成し、これらの置換残基の蛋白質の安定性及びフォールディング速度に与える残基の影響を調べた。その結果、シスPro残基は必ずしも遅いフォールディングに重要な役割を演じていないこと、また、荷電残基Glu192の分子内部の存在は安定化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。更に、PCPの二次元HSQCスペクトルの帰属をほぼ終了した。その帰属を用いて、PCPのα6ヘリックス領域がPCPの変性状態において、唯一H/D交換から強く保護される領域であることが分かった。この状態が遅いフォールディングに重要な役割を果たしているように見えた。
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