研究課題/領域番号 |
17570102
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
油谷 克英 独立行政法人理化学研究所, 構造解析高度化研究チーム, 上級研究員 (90089889)
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研究分担者 |
澤野 雅英 独立行政法人理化学研究所, 構造解析高度化研究チーム, リサーチアソシエイト (10415177)
瀬川 新一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70103132)
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キーワード | 蛋白質のフォールディング / 蛋白質の変性構造 / 超好熱菌 / NMR / 蛋白質の安定性 / αヘリックス / ピロリドンカルボキシペプチダーゼ / アミノ酸変異型 |
研究概要 |
蛋白質のフォールディング問題は、蛋白質研究の全てに関わる基本的課題である。私達は、超好熱菌(P.furiosus)由来のピロリドンカルボキシペプチダーゼ(PCP)のリフォールディング速度が異常に遅いことを発見した。本研究課題では、PCPのフォールディングの初期構造の特徴をNMRの手法を用いて明らかにするとともに、この変性状態のどのような構造的因子が鍵となって高い協同性を保証しているのかアミノ酸変異型を用いてCD及び熱測定などの物理化学的手法で解明することを目的とする。昨年度において、PCPの二次元HSQCスペクトルの帰属をほぼ終了した。その帰属を用いて、PCPのα6ヘリックス領域がPCPの変性状態において、唯一H/D交換から強く保護される領域であることが分かった。この状態が遅いフォールディングに重要な役割を果たしているように見えた。そこで、本年度は、α6ヘリックス領域がPCPの安定性と構造形成にどのような役割を果たしているかを明らかにすることに研究の焦点を置いた。その結果、PCPのα6ヘリックスでの変異型(A199P)と野生型では構造形成の初期状態の構造に変化があることが判明した。つまり、野生型では既にα6ヘリックス構造が形成されていたが。変異型ではα6ヘリックスが壊れ、非天然の疎水性クラスターの形成が見られた。更に、α6ヘリックスに相当する配列ペプチドS188〜E205(SYEMELEAVKVAIEVALE)(野生型ペプチド)のヘリックス形成能をA199Pに相当するペプチド部分(変異型ペプチド)と比較すると、野生型ペプチドがTFE共存下でより高いヘリックス形成が見られた。これらのことはPCPの構造形成に構造形成初期状態でα6ヘリックスの存在が重要であることを示している。変性状態でのα6ヘリックス形成が異常に遅いフォールディングどのように関連するかは今後の課題である。
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