研究課題
基盤研究(C)
私達は、超好熱菌(P.furiosus)由来のピロリドンカルボキシペプチダーゼ(PCP)のリフォールディング速度が異常に遅いことを発見した。そして、この異常に遅いPCPのリフォールディングの速度を温度によって自由に制御できる条件、更に、この異常に遅いリフォールディング反応は、天然状態と変性状態間で非常に高い協同性をもつ2状態変性であることを見いだした。本研究では、15Nや13Cで安定同位体標識したPCPを作製し、PCPのフォールディングの初期構造の特徴をNMRの手法を用いて明らかにするとともに、このD状態のどのような構造的因子が鍵となって高い協同性を保証しているのかアミノ酸変異型を用いてCD及び熱測定などの物理化学的手法で明らかにすることを目的とした。まず、PCPの二次元HSQCスペクトルの帰属をほぼ完成させた。その帰属を用いて、PCPのα6ヘリックス領域(Ser188からGlu205)がPCPの変性状態において、唯一H/D交換から強く保護される領域であることが分かった。この状態が遅いフォールディングに重要な役割を果たしているように見えた。そこで、α6ヘリックス領域がPCPの安定性と構造形成にどのような役割を果たしているかを明らかにすることに研究の焦点を置いた。その結果、PCPのα6ヘリックスでの変異型(A199P)と野生型では構造形成の初期状態の構造に変化があることが判明した。つまり、野生型では既にα6ヘリックス構造が形成されていたが。変異型ではα6ヘリックスが壊れ、非天然の疎水性クラスターの形成が見られた。これらのことはPCPの構造形成に構造形成初期状態でα6ヘリックスの存在が重要であることを示している。変性状態でのα6ヘリックス形成が異常に遅いフォールディングにどのように関連するかは今後の課題である。
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