高浸透圧ストレスに対応するため出芽酵母にはHOGMAPK経路が存在する。HOG経路は2つの独立した高浸透圧センサーをもち、その一方のSln1はヒスチジンキナーゼとして多段階リン酸リレーによりYpd1、Ssk1へとリン酸基をリレーする。この結果、Ssk1は通常不活性型と考えられていうリン酸化状態にある。高浸透圧条件下ではSln1からのリン酸リレーが停止するため、Ssk1は非リン酸化型として活性化し、下流のSsk2/Ssk22 MAPKKKの活性化に働き、以下Pbs2 MAPKK、Hog1 MAPKの活性化につながる。本研究ではHOG経路の活性化因子と考えられるSsk1が、高浸透圧ストレスを受けない条件ではリン酸化型としてSsk2の活性化を抑制する積極的な機能を有し、高浸透圧ストレスに応じて抑制因子から活性化因子にその機能を転じるという考えのもと研究を進め、これを支持する知見が集まりつつある。 本年度は我々が単離したドミナント・ネガティブSsk1変異体がいかにしてSsk2活性化を抑制するかに焦点を絞って解析を行った。二種類のドミナント・ネガティブSsk1変異体のSsk2に対する結合性をtwo-hybrid法で調べたところ、1つの変異体はSsk2との結合性が極めて低いことがわかった。したがって、このドミナント変異体は直接Ssk2に結合することなく、その活性化を抑制することが考えられた。一方、Ssk1はホモ二量体を形成することを見いだしたが、上述のSsk1変異体は二量体形成に関して野生型と変わらなかった。以上のことから、Ssk1は通常、リン酸化型で存在し、不活性型として存在する。一部、活性型の非リン酸化型Ssk1が生じた場合でも、リン酸化型Ssk1がこれと二量体を形成し、この活性を抑えるため、高浸透圧刺激がない場合は不適切なSsk2活1生化が抑える、というモデルが提案できる。
|