研究概要 |
腸内連鎖球菌Enterococcus hiraeのV-ATPaseは、H^+ではなくNa^+及びLi^+を特異的に輸送する。9種類のサブユニットから構成され、NtpA, NtpBサブユニットがV1触媒頭部の主要サブユニットであり、イオン輸送に直接関わる膜部分V0は、イオン結合ローターを構成するNtpK、輸送通路の形成に関わるNtpIサブユニットからできている。本研究はNtpKとNtpIの構造と機能及びイオン輸送過程におけるこれらのサブユニット間の相互作用を明らかにすることを目的としている。今年度は部位特異的変異導入を用いた分子生物学的解析を中心に行い、以下の結果を得た。 V0部分によるイオン輸送にはNtpIの第6膜貫通αヘリックスの必須R573残基とともに、第7膜貫通αヘリックスの膜表面近傍に位置すると推定されるH626及びE634残基が重要な役割を担うことを昨年度指摘した。これらは原核生物型V-ATPaseだけではなく真核生物型V-ATPase NtpI(subunit a)間で共通に保存されている残基である。H626AあるいはE634A置換変異体ではV-ATPase活性が完全に失われたが、これらの変異によりV-ATPase複合体の構築には影響が見られなかったことから、これらの残基は真核細胞V-ATPaseで見られるようなサブユニット間のアセンブリーに関わるのではなく機能性残基であると考えられた。
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