研究概要 |
腸内連鎖球菌Enterococcus hiraeのV-ATPaseは、H^+ではなくNa^+及びLi^+を特異的に輸送する。本酵素は9種類のサブユニットから構成され、イオン輸送に直接関わる膜部分V_0は、イオン結合ローターであるNtpK、イオン輸送通路の形成に関わるNtpIサブユニットから構成されていることが示されているが、他のサブユニットについては相互関係など明確ではない。 イオン輸送性回転モーター機構を理解するためには、V-ATPaseの全複合体におけるV_0部分の構造上の位置づけを明らかにする必要があるが、現在までのところ本酵素全複合体の結晶化には成功していない。9種類のサブユニットから構成されるV-ATPase複合体の全体像を把握するために、9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったF, Gサブユニットを含めてA, B, C, D, E, F, GサブユニットがV_1部分を構成し、I, KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA, C, D, I, Kサブユニットから構成される複合体が形成されることがわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。V_0部分を含めた本酵素のサブユニット構造の全体像を知る上で、特定サブユニットの欠失複合体の分子形態の解析を進めることが有用なアプローチの一つになると考えられた。
|