研究概要 |
本研究の目的は、より効果的なIGF-I受容体機能を阻害する単鎖抗体を新規に作製し、IGF-I受容体に対する分子標的治療法の確立を目指そうとすると同時に、単鎖抗体に誘起されるIGF-I受容体のdownregulationとその分解過程の分子機構を明らかにしようとするものである。 1.Phage display法の活用により種々のIGF-I受容体に対する単鎖抗体をスクリーニングし、種類と質の充実を図るとともに、よりhigh affinityの改良型単鎖抗体を調製する。 (1)ファージ提示型ヒト単鎖抗体ライブラリーの作製と改良:安定でレパートリー数の多いファージ提示型ヒト単鎖抗体ライブラリーの簡易システムを開発しているが、さらに単鎖抗体として精製を容易にするためにtagの改良をしつつある。 (2)IGF-I受容体に対するヒト単鎖抗体のスクリーニング:現在までに23クローンを単離したが、3クローンが同一であったため20の異なる抗体ファージを得た。抗体ファージとしての特異性・親和性解析が終了し、融合タンパク質として単鎖抗体の発現・精製を進めている。得られた抗体はすべて異なる配列であったにもかかわらず、エピトープ特異性が同様である可能性が示唆されたので、さらに、エピトープ特異性が異なる様々な単鎖抗体を取り揃える必要がある。 2.既存及び新たな単鎖抗体の抗がん効果とそのメカニズムを評価する: (1)新たな単鎖抗体の親和性、エピトープ特異性、agonist作用、抗がん効果などからの分類:1-(2)で単鎖抗体の精製が完了し次第、進める予定である。 (2)IGF-I受容体に対する単鎖抗体によるdownregulationのメカニズムの解明:すでに解析が進んでいる1H7由来単鎖抗体による解析、および1H7とはエピトープ特異性が異なるmAbである自家製3B7,2C8に加え、市販品数種のmAbによるdownregulationのメカニズムの比較・解析を進めた。 さらに、新知見として、IGF-I受容体に対する(単鎖)抗体により、インスリン受容体のdownregulationが起こること、その機構解明が進んだ。これは、Dr.Yeeとの共同研究での成果であり、Cancer Res.2006年2月号に掲載された。
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