小胞体からゴルジ体への輸送のメカニズムは次第に明らかになってきており、最近では、細胞辺縁部に位置するER exit siteから出芽したCOPII小胞同士が互いに融合して、より大きな膜構造であるVTCs(tubulo vesicular compartments)を形成し、VTCsが核近傍のゴルジ体に運ばれると考えられている。ゴルジ体局在膜蛋白質giantinを指標にして、小胞輸送因子p115をノックダウンした細胞を詳細に観察すると、機能的にも形態的にもシスートランスの勾配を保った短い層板からなるゴルジ体がVTCs(マーカー蛋白質ERGIC-53)、ER exit sites(マーカー蛋白質sec13)と独立して、細胞全体にわたって散在していた。最近報告されたゴルジ体の成熟化モデルに照らし合せるとp115ノックダウン細胞では微小管モーター複合体と相互作用できないVTCsがER exit sites近傍でミニ重層ゴルジを形成すると考えられる。VTCs膜上にはp115が多量に存在することが確認されている。微小管モーター、ダイニンーダイナクチン複合体と相互作用するBicaudal-Dの局在について各スプライスバリアントにタグを付けたクローンを培養細胞に導入して調べたところ、細胞辺縁部、微小管と思われる構造および微小管形成中心に局在が観察されたが、p115の局在と一致するものはなかった。相互作用する時間が非常に短いことや、出発オルガネラ、目的オルガネラで結合状態を保っていないことなどの理由で、定常状態の細胞では共局在しているのを観察するのは難しいと考えられる。そこで、Bicaudal-Dに対する抗体を作製して免疫沈降したところ、少量ではあるがp115が共沈することがわかった。p115は微小管モーター複合体とCOPII小胞由来VTCsの相互作用を進める働きすることが示唆された。
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