研究概要 |
二成分情報伝達系はバクテリア、カビ、植物に広く分布する環境感知タンパク質である。根粒菌酸素センサーシステムはFixLキナーゼとFixJレスポンスレギュレーターから成り窒素固定遺伝子の発現制御を行う。 我々はFixJのC末半分のDNA結合ドメインの溶液構造をNMRによって決定した。その結果、ヘリクス-ターン-ヘリクスから成ることが判明した。また、このドメインが結合するfixKプロモーターのDNA配列も決定し、2分子が結合することがわかった(Kurashima-Ito et al.,2005)。 一方、FixLに関してはこれまでにそのセンサードメインの結晶構造が決定されており、リガンド結合型と解離型との構造上の違いがキナーゼ活性制御と関連があると思われていた。すなわち、ヘムのプロピオン酸と2つの側位アルギニンの間に見られる塩橋の有無と、リガンドと遠位アルギニンの間の水素結合である。そこで、これらのアルギニン置換変異体を作成し、リガンド結合、リン酸化活性を調べたところ、側位アルギニンとの塩橋は酸素結合の安定化には重要であるが、リガンドに依存したリン酸化活性の制御には必須ではないことが判明した。また、遠位アルギニンも酸素結合の安定化には重要であるが、リン酸化活性制御は水素結合ではなく、もっと弱い相互作用によるものであると示唆された(Tanaka et al.,2006)。 ジフテリア菌のchrS、chrAは遺伝学的に発見されたヘム応答系遺伝子であり、その塩基配列から二成分情報伝達系であることが推定されているが、タンパク質レベルでの研究は皆無である。そこで、chrS遺伝子を大腸菌に導入し、ChrSタンパク質を大腸菌細胞膜で発現させた。このタンパク質を含む細胞膜ではヘム依存的にChrSタンパク質の自己リン酸化が認められ、ヘムセンサーとして機能していることをタンパク質レベルで始めて実証した。
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