研究課題/領域番号 |
17570129
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
太田 善浩 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (10223843)
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研究分担者 |
山下 均 国立長寿医療センター, (研究所)・老化制御研究部, 室長 (20342967)
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キーワード | UCP2 / ミトコンドリア / 膜電位 / 酸化ストレス / 細胞死 / 神経細胞 |
研究概要 |
神経細胞のミトコンドリア内膜にはUCP2と呼ばれる蛋白質が発現しており、神経細胞を細胞死から守っている。しかし、この蛋白質はミトコンドリア内膜に多量に発現させることが難しく、この蛋白質のどのような機能が細胞保護につながっているのか、よくわかっていない。本研究は、ミトコンドリアを単一・集団の両面から効率よく高い精度で測定することで、UCP2の働きを明らかにし、その働きがどのように細胞保護効果につながるのか解明することを目的とした。 測定用の試料としてUCP2が多く発現しているNeuro2a細胞と、UCP2の活性のない変異体を発現させることでドミナントネガティブ効果によりUCP2の発現量が減少した細胞の2種類を用いた。細胞を膜電位感受性蛍光色素TMREで染色しミトコンドリアの膜電位を比較したところ、両者の細胞で有意差は認められなかった。また、細胞から単離したミトコンドリアにおけるATP合成速度も誤差の範囲内で同じであった。そこで、細胞に過酸化水素を短時間付加し細胞に与えるダメージを比較したところ、UCP2の発現量を減らした細胞はUCP2の発現量の多いコントロールに比べて細胞死を起こしやすく、また、ミトコンドリアの脱分極も観察された。更に、これらの細胞から単離したミトコンドリアでUCP2の機能と関連の深い脂肪酸の影響を調べたところ、明確な影響は認められなかった。しかし、UCP2の阻害剤であるGDPは活性酸素の発生量を増大させたので、UCP2がミトコンドリア内で活性酸素の発生を減少させる役割を持っていることがわかった。 以上から、Neuro2aに発現しているUCP2はミトコンドリアの膜電位を脱分極させたり、ATP合成速度を減少させたりはしていないものの、酸化ストレス時に生じるミトコンドリアの損傷を軽減させ、細胞を保護する働きがあることが確認できた。18年度には、このメカニズムの解明に取り組む。
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