1.アミロイド様会合体形成の基本過程 全ジスルフィド結合欠損リゾチーム変異体(OSS)のアミロイド様線維形成反応速度は塩濃度やpHに依存し、蛋白の正電荷遮蔽が会合を速める。会合は核形成-伸長反応スキームに合致し、臨界モノマー濃度が存在し、核サイズは塩濃度やpHに依存する。線維中のトリプトファン残基は疎水環境にあり、量子収率が上昇する。圧力解離解析から得られる線維の比容積はかなり大きい。線維の長さ分布を考慮した理論式を導き、1分子解離の速度定数を得た。一方、種々の部分構造を保持する1SS変異体間では線維形成速度に3桁に及ぶ差異が見られ、プロトフィブリル様線維の効率的な形成にはN末端とC末端領域の隔絶が必要である。それらの核サイズと原子間力顕微鏡下の形態には大差がないが、X線小角散乱から得られる線維径には有意な差がある。さらに、4SS体の作る線維は形態、線維径ともに大きく異なる。以上、蛋白内構造の種類と大小が線維形成反応の速度ならびに反応様式を左右していることがわかった。 2.アミロイド様会合体における構造化ペプチド領域の同定 NMR検出H-D交換法を用い、水素結合形成などの構造化により線維中で交換から保護されるペプチド領域を同定した。0SS体線維では夫々7-9残基長の4箇所のペプチド領域であり、高い疎水性とベータ形成能の両者を示す領域と一致した。赤外吸収測定によれば、それらの領域は反平行ベータ構造をとる。一方、1SS変異体線維では構造化領域に差が見られ、2種の1SS体では0SS体で見られた部位に近似し、他の1SS体では異なった部位が保護された。それらの部位は、WTリゾチーム線維でのプロテアーゼ耐性コア領域とも異なる。これらの結果は、蛋白内構造の種類と大小により、線維化の核形成部位ならびに伸長部位が多様であることを示す。
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