本年度は、まずmolecular LEGOで使用する各種の機能ドメインのクローニングを行った。続いて、それらを1つのvectorに順次クローニングすることによって、キメラ遺伝子を作製した。さらに、キメラ遺伝子の各ドメインに突然変異を導入することにより、転写活性、mRNAの安定性、タンパク質の崩壊速度などが変化したvariantを創出した。 続いて、それらのキメラ遺伝子を各種の組み合わせで培養細胞に導入することで、人工的な遺伝子ネットワークを再構成した。これらの遺伝子ネットワークの発現モニターのために本年度購入した発光記録装置『ATTOクロノス』を用いた。まず最初に、単純な自己ネガティブフィードバックループ構造を再構成した。人為的に再構成したネットワークでも自己フィードバックが起きている結果が示されたが、振動の振幅や安定性は非常に低かった。各種パラメータを変化させたvariantを試したが、目立った改善はみられなかった。そこで、ネットワーク構造を改変し、正のフィードバックループを1つ加えて緩和振動型の遺伝子ネットワークを組み直したところ、非常に安定な振動が得られた。振動の周期は約2時間から6時間で、およそ96時間に渡って振動し続けた。これは、真核生物を使った遺伝子ネットワーク再構成系では始めての結果である。また集団レベルで振動が存続する(位相の同調性が高い)こと、非常に長期間振動が安定なこともこれまでの原核生物での実験とは異なっている。各種パラメータを変化させたvariantを調べると、抑制系ループを構成するmRNAの崩壊が早いほど振幅が大きくなる一方、タンパク質の崩壊速度が早いほど周期は長くなる傾向が得られた。 次年度は、さらに長い周期、安定な振動、概日リズムに見られる周期の温度補償性を生じるためのネットワークデザインやパラメータ設定を探索する実験を行う予定である。
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