昨年度の成果として、ポジティブおよびネガティブなフィードバックループから構成される緩和形振動型の遺伝子ネットワークにより4-6時間程度の短周期振動が生み出されることがわかった。そこで、本年度は、ネットワーク構成因子のmRNAおよびタンパク質の安定性(崩壊速度)、ネガティブ因子とポジティブ因子それぞれをコードするplasmidの細胞への導入比率、ネガティブ因子の核移行および転写抑制率に関して変異体を作製して調べた。mRNAの崩壊効率については、作製したキメラ遺伝子の3'末端に鉄反応配列を組み込み、計測培地内に添加する鉄イオンの濃度を変化させて実験を行った。その結果、mRNAの崩壊が早いほど、振幅が大きく安定な振動が得られることがわかった。 タンパク質の安定性に関しては、マウスのオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子由来のPEST配列とその変異体をsite directed mutagenesis法を用いて作製した。半減期の計測を行ったところ、2時間と16時間の変異体がえられていたので、これを用いて遺伝子ネットワークの再構成を行った。しかし、周期の安定性、振幅、周期には両者の問で明瞭な差はみられなかった。ただし、ポジティブおよびネガティブループを構成する因子の半減期が近いときに、より周期が安定である傾向が見られた。ネガティブ因子の核移行効率に関しては、ネガティブ因子として用いたGal80に結合して阻害効果を示すGal3を構成的に発現させ、阻害効果に必須のガラクトース濃度を変えて調べた。Gal3による阻害が大きいとき、即ち、ネガティブ因子の核移行効率が悪いときには周期が延びる傾向があったが、概日周期まで延長することはできなかった。
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