研究課題
基盤研究(C)
特異的なDNA分子が細胞内の特定のポジションに位置する分子機構のモデル系として、Fプラスミドの分配機構を解析した。免疫蛍光抗体法により、プラスミドがコードするプラスミドDNAの分配に必須なSopAとSopB蛋白質の細胞内分布を調べ、これらの蛋白質が螺旋状に細胞内に存在していることを明らかにした。SopB蛋白質は細胞の長軸に沿って、等間隔のフォーカスを形成しており、ミニFプラスミドDNA分子は主にそれぞれこのフーカス内に存在していることが、FISH法と免疫蛍光抗体法の同時解析によって明らかになった。SopAホモローグは細胞端から細胞端に振動する性質があることが知られている。これらの実験結果に基づき、我々はプラスミド分配の新しいモデルを提出した(Adachi, Hori and Hiraga,2006)。それはSopAとSopBが細胞内を細胞端から他の細胞端に振動しながら、次第に細胞の長軸上に等間隔のSopBのフォーカスを作り、プラスミドDNA分子はそれぞれこのフォーカス内に存在するというモデルである。このタンパク質の振動のメカニズムは、数学者アランM.チューリングが生物のパターン形成のために提案した「反応拡散システム」によるものと推測され、そのシミュレーションの結果は実験結果と良く一致した。このFプラスミドのタンパク質の振動と位置決定のモデルは、原理的にはシマウマやゼブラフィッシュの縞模様形成のモデルと同じもので、最もシンプルな生化学的手法で検証可能なパターン形成のモデル系である。染色体分配にも似た機構が含まれているに違いない。
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