当研究における目的は、ピストンH2A C末端の脱リン酸化酵素の同定を行うことと、このリン酸化の制御がクロマチンの構造及び細胞増殖に与える影響を明らかにすることであった。しかし、本年度も脱リン酸化酵素の同定には至らなかった。細胞抽出液からの精製を行い、質量分析により得られた脱リン酸化活性を持つと予想される分子の組換えタンパク質を作成したが、脱リン酸化活性は見られなかった。また、候補となる分子の抗体を作成し、脱リン酸化活性を含む分画にその分子が存在するかをウエスタンブロッティグ法により確認したが、活性と候補となる分子の分画は一致しなかった。現在はまだ同定には至っていないが、候補となる分子は絞られてきており、現在の解析法を継続することにより、近い将来には同定に至ると考えている。しかし、現在使用中の細胞抽出液には、脱リン酸化酵素の含有量が少ない可能性もある。その場合質量分析で目的の分子が検出されにくいこともありえるので、異なる方法で作成した細胞抽出液からの精製・同定も行っていきたい。当研究を進めていくにおいて、リン酸化とは異なるピストン修飾であるアセチル化活性をもつ分画を発見した。この分画はATP依存的というユニークな特徴を持っている。ピストンのアセチル化もリン酸化と同様にDNAの高次構造に大きな影響を与えることが知られており、今後はこのアセチル化酵素の同定も行いたい。
|