研究概要 |
出芽酵母細胞のコミットメントに関与する遺伝子群において、クロマチンを介した転写制御機構を明らかにすることを目的として、a-細胞特異的遺伝子、減数分裂初期遺伝子などの発現制御におけるヌクレオソームポジショニングの分子機構について解析した。さらに、転写抑制クロマチンドメインを保持したミニ染色体を単離する方法を検討した。 1.a-細胞特異的遺伝子におけるヌクレオソームポジショニングの機構を明らかにするために、クロマチンリモデリング因子Isw2複合体の構成因子である、isw2,itc1,dls1,dpb4の変異株を解析した。その結果、転写抑制とヌクレオソームポジショングにはIsw2とItc1が必須であり、分子複合体中の構成因子の機能が明らかになった。 2.Spt10-Spt21がa-細胞特異的遺伝子BAR1の転写抑制に関与することを見いだした。Spt10-Spt21は、BAR1のほかにリン酸飢餓で誘導発現されるPHO5の転写抑制にも関与していることが示された。この結果は、Spt10-Spt11がヌクレオソームポジショニングを介する転写抑制機構に関与していることを示唆している。 3.転写抑制クロマチンドメインを保持した酵母ミニ染色体を単離するために、出芽酵母ゲノムのHHF1(histone H4)遺伝子座を改変し、6×Hisタグ付H4を発現する株を構築した。さらに、 HHF2(H4の別の遺伝子座)についても改変し、6×Hisタグ付H4のみを発現する株の構築を進めている。一方では、単離ミニ染色体を位相差電子顕微鏡の試料とするために、チミジン要求性菌株を用いて、5-プロモデオキシウリジンをミニ染色体中のDNAに取り込ませる系を検討している。今後、生化学的解析に加えて、原子間顕微鏡ならびに位相差顕微鏡によって、転写抑制クロマチンドメインの分子複合体の構造と機能の解析を進める。
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