研究概要 |
高等真核生物においては複製開始に先立ち複製前複合体の形成が必須である。複製前複合体はOrc1-6、Cdc6、Cdt1、Mcm2-7が段階的にクロマチンへ結合することで形成され、複製開始の負の制御因子であるgemininによって阻害される。しかしながら、各因子がどのように相互作用し複製前複合体が形成されるのか、その詳細な分子構築は明らかとなっていない。 これまでに、我々はマウス及び線虫Cdt1を中心とした解析から、gemininがCdt1とMcm6の結合を抑制するという多細胞生物に保存された分子メカニズムを明らかにしてきた。本研究ではCdt1の複製前複合体形成における役割をさらに解析した。酵母two-hybrid法により、Cdt1とOrc2間の相互作用が検出された。欠失変異体による解析からCdt1、Orc2それぞれの中央領域が相互作用に必要であることが示唆された。このCdt1の中央領域はgeminin結合領域と一致していた。次に、酵母two-hybrid法による結果を確認するために、組換えタンパク質を用いたin vitroにおける機能解析を進めた。大腸菌で発現、精製したGST-Cdt1とN末端236アミノ酸を欠失したOrc2(Orc2ΔN)を用いた共沈降実験から、Cdt1とOrc2ΔNの相互作用が確認された。さらに、Cdt1とOrc2ΔNの相互作用はgeminin存在下で阻害された。しかし、gemininはあらかじめ結合したCdt1とOrc2ΔNとを解離することはできなかった。これは、gemininが複製前複合体形成後には複製開始を阻害できないという、従来の報告と合致している。以上の結果から、複製前複合体の中枢を担うOrc-Cdt1-geminin間の相互作用の詳細を明らかにする事が出来た。今後はMcm2-7,Cdc6等を含めた複製前複合体の試験管内再構築へと研究を展開したい。
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