研究概要 |
我々は、哺乳類細胞の複製前複合体の形成および制御機構を解明するために、マウスのOrcサブユニットの機能解析を進めてきた。これまでにマウスOrc1、Orc2、Orc3にsplicing variantが存在することを見出した(Miyake et al.,JBC,2005)。Orc1を一過性過剰発現させた場合、Orc1Aはプロテアソームにより速やかに分解されるのに対して、Orc1Bは分解されず安定に細胞質に局在することを見出している。この分解には、Orc1Bが欠失している領域に含まれる276番目のセリン残基(Ser-276)のリン酸化が関与していることが示唆された。このリン酸化部位特異的抗体を作製したところ、過剰発現させたOrc1Aは認識され、脱リン酸化処理したOrc1AおよびOrc1Bは検出されず、Ser-276のリン酸化を特異的に認識することが確認された。また、Ser-276のリン酸は上流のCyモチーフ(233-235アミノ酸)に依存する事も明らかにした。さらに、核へ移行できない変異型Orc1A(mOrc1A:KRR(266-268)NQQ)、N末領域を欠失した変異体が高リン酸化状態にあることを見いだし、Orc1のN末端領域がSer-276のリン酸化制御に重要である事が示唆された。ヒトOrc1のN末領域のBAHドメインはHP1alphaと相互作用する事が報告されている。我々は、マウスOrc1-BAHドメインもHP1alaphと相互作用する事をGST-プルダウンアッセイにより明らかにした。一方、pre-RC,pre-IC構成国子の中にもOrc1-BAHドメインと相互作用する因子があるのではないかと推測し、精製タンパク質を用いてタンパク質間相互作用の有無を探索した。NIH3T3中に一過性過剰発現させたCdc45と相互作用する事が明らかになった。Ser-276のリン酸化はヘテロクロマチン中では、HP1がBAHドメインと相互作用し、Cyもチーフが隠されるためM期までリン酸化されずにおり、Pre-IC中ではCdc45と相互作用しており、複製開始に伴いCdc45-BAHドメイン間相互作用が解消されるとSer-276がリン酸化され、Orc1はクロマチンから遊離しプロテアソームにより分解されるのではないか、というモデルが示唆された
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