研究概要 |
真核細胞の細胞膜において、リン脂質は二重層間で異なる分布をとっている。これはリン脂質の非対称性と呼ばれているが、生理学的にどのような意義を持つのかは不明である。我々が出芽酵母で見出した膜蛋白質ファミリー、Cdc50ファミリーは、リン脂質トランスロケースの非触媒サブユニットである。我々はCdc50ファミリーの変異株を用いてリン脂質トランスロケースの細胞における役割を解析し、平成18年度は、以下のことを明らかにした。 1.細胞膜で機能するCdc50ファミリーの一員Lem3を欠損した株を用いた解析から、細胞膜のリン脂質トランスロケース活性は、芽の成長過程において、頂端成長から等方成長への切り替えに必要であることを明らかにしてきた。これは、極性成長部位で特異的に細胞膜外層に表出したホスファチジルエタノールアミン(PE)が、リン脂質トランスロケースの作用により内層に取り込まれることが等方成長への切り替えに必要であることを示しており、この過程に低分子量GTPase, Cdc42が重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、このPEの外層から内層への移行が、Cdc42の負の制御因子であるGAPを活性化している可能性も明らかにした。 2.主にTGN/endosomeで機能するCdc50を欠損した細胞(cdc50Δ株)は、低温条件下で極性を失った、より球形な細胞形態を示し、増殖を停止する。我々は、cdc50Δ株の低温増殖不全を抑圧する復帰変異を探索し、新規遺伝子YMR010wの変異を同定した。YMR010wの欠損は、cdc50Δ細胞の細胞極性形成異常、endocytic recycling異常を効率よく回復させることを示し、CDC50のリン脂質トランスロケース活性の関わる事象にYmr010wが深く関与している可能性を明らかにした。
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