DNA複製の許可を取り消すこと、すなわちクロマチンからのMcmのアンローディングに関して、第一に検討すべきはそのローディングに必須な因子であるCdc6である。本研究で明らかにすることは、第一にCdc6がMcmのアンロードに関わるのかどうかであり、そのためには、いったんMcmをローディングしたあとにCdc6をクロマチンに導入することを阻止し、Cdc6がMcmをローディングしてクロマチンを離れたあとに、抗Cdc6抗体を卵に注射し、Mcmのアンロードが起こるかどうかを観察する。この実験のためには未受精卵ではMcmがすでにクロマチンに存在しており、受精後にクロマチンから離れるイトマキヒトデの実験系は非常に有効であると期待される。これまでに作成したCdc6の抗体は内在性のCdc6を特異的に認識できなかったが、本年度にはヒトデのCdc6を認識することができる抗体を作成することに成功した。この抗体を用い、ヒトデの減数分裂中でのCdc6の挙動を明らかとし、さらに現在はこの抗体を多量に調製し、精製しCdc6の機能を中和できるかどうか検討中である。また、Cdc6が減数分裂中にタンパク質が合成されてDNA複製開始に機能しているとみられるため、その発現を、モルフォリノオリゴヌクレオチドをもちいて特異的に阻害することにより、Cdc6のノックダウンを試みた。その結果、90%のCdc6をノックダウンして発現を抑制しても、クロマチンに存在するCdc6の量を減少させることはなかった。したがって、Cdc6は大過剰量卵の中に存在することがわかった。
|