PHGPxは精巣に最も多く発現しており、精子形成細胞のさまざまな区画に局在する。その局在の多様性と用いたペプチド抗体の反応性から、PHGPxは、細胞内では他のタンパク質と複合体をつくり、さまざまな区画で特異的なきのうを果たしている可能性が考えられた。そこで、タンパク質複合体を活性のある状態で分離することができるブルー。ネイティブ・ポリアクリルアミド電気泳動法(BN-PAGE)、SDS-PAGE、ウェスタン・ブロット(WB)法を組み合わせた方法(BN-SDS-WB法)で、ラット精巣ミトコンドリア画分のPHGPxタンパク質複合体を分析した。はじめに、タンパク複合体の抽出条件を検討した。ドデシル・マルトシドとデオキシコール酸ナトリウムが最も強い抽出効果を示した。次に、ドデシル・マルトシド抽出物をBN-SDS-WB法で分析した。440kDaを超える分子量から100kDaまでに分布するタンパク質複合体に由来する19kDaのPHGPxのシグナルが見られたが、66kDa以下には19kDaのシグナルはみられなかった。この多様な大きさの複合体に由来するPHGPxは、抽出物をメルカプトエタノールとSDS存在下で加熱還元すると、すべて19kDaのスポットに収束した。結果は、ラット精巣ミトコンドリアのすべてのPHGPxは、400kDaから100kDaの多様な大きさのタンパク複合体として存在することを示す。この複合体の多様性は、各分化段階にある精子形成細胞におけるミトコンドリアPHGPxの複数の機能を示唆する。今回、複合体に由来すると思われるいくつかのポリペプチド・スポットのMFP分析を行なったが、結合相手の特定には至らなかった。今後はPHGPx複合体を単離して、そのMFP分析を行ない、結合相手タンパク質を特定する。
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