接着の制御に重要な働きをするRap1/RapLの作用機序を解明するため、RapLの会合分子をyeast two hybrid法で検索し、ste20-like kinase(STK)を単離した。STKとRAPLの会合は、Rap1の活性化によって促進することが判明した。この機序として、Rap1にGTPが結合するとSTKに会合するC端側のcoiled-coil領域が露出するためであることが、この領域を特異的認識する抗体を用いたsurface plasmon resonanceによって明らかにした。STKはRapLと会合することによってそのkinase活性が上昇することを、自己リン酸化スレオニン特異的に認識する抗体及びMBPを基質としてIn vitro kinase assyによって明らかにした。また、TCRやケモカインによってリンパ球を刺激するとRap1の活性化とともに、STKの活性化が生じることが判明した。RapL欠損マウスからのTリンパ球を用いて、これらからの刺激によるSTKの活性化及び細胞内局在の制御にRAPLが重要な働きをしていることも判明した。 STKがRap1/RAPLの下流で接着の制御に関与する可能性を過剰発現及びsiRNA法によってknockdownすることによって検討した。BAF/LFA-1(proBcell line)へ、STKを導入すると浮遊細胞であるBAF/LFA-1はICAM-1上に接着し伸展した。しかしながらRAPLとの会合部位であるCoiled-coil領域或はkinase domainにmutationを入れたkinase dead mutantでは、接着誘導効果は見られなかった。このことから、STKの接着誘導には、RapL会合部位及びkinase活性が必要であるとがわかった。siRNA法によってknockdownすると、ケモカイン及び抗原刺激によって誘導される接着、並びにRap1の優勢活性型Rap1V12を導入することによって誘導される接着も、顕著に低下することから、STKはこれらの接着に必須であることが明らかとなった。STKはRapLと共局在しており、接着するとそのcontact siteへRAPLとともに集積することも明らかとなった。以上の結果より、Rap11/RapL/STKが、リンパ球の需要な接着制御シグナルカスケードであることが判明した。
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