小胞体関連分解(ERAD)の分子機構を解明するため、まず、ERADで分解を受けるモデル基質として用いているα1-antitrypsin亜型NHKタンパク質、およびN結合型糖鎖を欠いたNHK-QQQ変異体を作製して、細胞内分解動態の差異を検討した。その結果、以下の3点が明らかになった。1)N結合型糖鎖を欠くNHK-QQQはNHKよりも早く分解される。2)プロテアソーム阻害剤によって細胞内分解が阻害されることから、NHK-QQQもNHK同様にERADの系で分解されている。3)細胞染色を施行すると、NHKは一部、シス・ゴルジのマーカータンパク質と共染色されるが、NHK-QQQは共染色されない。すなわちN結合型糖鎖をもつNHKは小胞体(ER)-ゴルジ装置間をリサイクルしているが、NHK-QQQはERに留まっている可能性がある。 次に、NHK、NHK-QQQ、およびEDEM各タンパク質のC末端にFLAG-tagを付加し、細胞に発現させた後、抗FLAG抗体を用いて共免疫沈降してくるタンパク質を、MASスペクトロメトリー法によって網羅的に検索した。しかしこの方法では、特異的な機能を示唆するようなタンパク質の同定には至らなかった。 今後、セミパーミアビライズした細胞や、精製したマイクロゾームを用いたin vitro degradation assay系を使って、ERAD基質分解におけるER-ゴルジ・リサイクリングの意義を検討していく予定である。
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