研究課題
本研究は、癌細胞の浸潤能獲得に関与する基本的分子装置を同定し、その制御機構を明らかにすると共に、癌治療薬の開発に対して新たな知見を提示することを目的としている。申請者は、これまでに乳癌細胞の浸潤性獲得において低分子量G蛋白質Arf6のGTPase cycleの制御が必須であること、そのエフェクター分子がArfGAP蛋白質AMAP1であること、そして、Arf6とAMAP1の蛋白質発現量と乳癌細胞の浸潤活性との間に良い相関があることを見出した。本研究期間では、以下の研究成果を得た。1.高浸潤性乳癌細胞におけるArf6及びAMAP1の蛋白質高発現に関する解析Arf6及びAMAP1の蛋白質高発現がユビキチン依存性の蛋白質分解システムによるのか、翻訳開始反応の制御によるのかについて検討した。Arf6及びAMAP1共にユビキチン化されることを観察したが蛋白質量の変化との相関はなかった。serum-strveした高浸潤性乳癌細胞、MDA-MB-231をEGF刺激することによりAMAP1の蛋白質レベルが増加すること、また、rapamycin処理によりAMAP1の蛋白質レベルの減少が観察されたことから、MDA-MB-231細胞において、AMAP1の高発現はmTOR pathwayを介した翻訳開始反応の制御によることが示唆された。この条件下では、Arf6蛋白質の発現レベルは影響を受けなかった。2.乳癌浸潤性獲得に関与するArfGEFの同定乳癌の悪性度の進行とレセプターチロシンキナーゼであるEGF receptor、erbB2、c-Metの発現亢進との間に良い相関があることが知られている。乳癌細胞のEGF又はHGF刺激による浸潤性亢進の際にArf6を活性化するArfGEFを同定するため、ヒトゲノムに存在する16種のArfGEF遺伝子についてMDA-MB-231細胞を用いてsiRNAによるスクリーニングを行い、候補分子を同定した(論文準備中)。3.乳癌以外の癌における浸潤性獲得に関与する分子装置の検討他の高浸潤性の癌として、肺癌、glioblastomaについて解析を行った。その結果、Arf6及びAMAP1の高発現と浸潤性とに相関がある細胞株が存在すること、また、Arf6及びAMAP1のsiRNAにより浸潤活性が抑制されることを見出した(論文準備中)。現在、病理学的解析を進めている。
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EMBO J. 24・5
ページ: 963-973
Methods Enzymol. 404
ページ: 216-231