研究課題
本研究は、癌細胞の浸潤能獲得に関与する基本的分子装置を同定し、その分子機序を明らかにすると共に、癌治療薬の開発に対して新たな知見を提示することを目的としている。本研究期間では、以下の研究成果を得た。1.高浸潤性乳癌細胞におけるArf6及びAMAP1の蛋白質高発現に関する解析Arf6及びAMAP1の蛋白質高発現がユビキチン依存性の蛋白質分解システムによるのか、翻訳開始反応の制御によるのかについて検討した。Arf6及びAMAP1共にユビキチン化されることを観察したが蛋白質量の変化との相関はなかった。しかしながら、これらの研究の中から、AMAP1はCb1によってモノユビキチン化されること、この修飾がAMAP1の癌浸潤活性に必須であることを明らかとした(Nam et al.,2007)。2.乳癌浸潤性獲得に関与するArfGEFの同定乳癌細胞のEGF又はHGF刺激による浸潤性元進の際にArf6を活性化するArfGEFをsiRNAによるスクリーニングにより候補分子を同定した。さらに、活性化型レセプターと直接的に相互作用することを明らかにし、結合に関わるドメインマップを進めている(特許出願中、論文準備中)。3.乳癌以外の癌における浸潤性獲得に関与する分子装置の検討これまでに、AMAP1を中心とした細胞浸潤に必要な複合体が存在することを報告してきた。特に、非典型的なAMAP1のプロリンリッチ配列とコータクチンのSH3ドメインとの結合様式についてX線構造解析から、この結合インターフェース構造が他の一般的なSH3/プロリン結合とは異なることを明らかにした。また、SH3 domain arrayを用いた解析から、特異性が高いことを見出した。そして、細胞透過性阻害ペプチド及び、低分子化合物を用いて、この結合インターフェースが乳癌の浸潤転移を阻害するための分子標的と成り得ることを肺転移モデルマウス系において例示した。さらに、この阻害ペプチド及び、低分子化合物を用いることにより、乳癌以外の肺癌、神経膠芽腫(glioblastoma)由来細胞の浸潤活性を著しく抑制できることを見出した(Hashimoto et al.,2006)。
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