分裂酵母ではヒトp38類縁のキナーゼSpc1/Sty1がストレスに応じて活性化され、cAMP応答配列(CRE)に結合するCREB/ATF型転写因子Atf 1・Pcr1の活性化を経て、一群のストレス遺伝子の転写が誘導される。また、Atf 1・Pcr1は、CRE様配列に依存したM2組換えホットスポットでのクロマチン再編成とその後の組換え活性化に関わる。このクロマチン再編成はSAPK経路によって制御され、ストレス応答時の転写制御においても、Atf1・Pcr1とTup様転写抑制因子がストレス遺伝子プロモーターでのクロマチン再編成の制御に関与する。実績を下記に示す。 1)昨年度取得したAda2、Hrp1、Hrp3や今年度取得したMst2(Myst2ホモログ候補)などのクロマチン関連遺伝子の欠失変異株を用いて、M26部位ににおけるクロマチン再編成の有無、組換え活性化能、ストレス作用時の転写応答について解析を実施L、Hrp3とAda2、Mst2がクロマチン再編成や組換え活性化に重要であることを示した(論文発表済み)。またHrp1とHrp3の相反的機能を明らかにした。 2)C_2H_2型Znフィンガー転写活性化因子Rst2・Scr1のグルコース抑制・脱抑制時のクロマチン再編成における役割を変異体解析により調べ、Rst2とScr1の相反的な核一細胞質シャトリングによるクロマチン再編成の制御を示し、論文に発表した。 3)環境ストレスを加えた際にTup類縁因子やRNA合成酵素がCRE部位にどのように結合するかを、クロマチン免疫沈降法により示した。その結果、Tup類縁因子が転写脱抑制時にもfbplプロモーター領域に強固に結合していることを示した。これにより、Tup類縁因子による転写抑制に関する新しいモデルを提唱した(論文発表済み)。
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