1.原腸形成期に後方神経板で発現し、前方発現境界が後脳r4領域を決定するhoxb1bについて、転写調節が主として下流2領域(d1とd4)に担われていることを見いだした。hoxb1bの発現は後方化シグナルのレチノイン酸(RA)に依存するため、下流領域のRAに対する応答能を検討し、d1、d4領域がRA応答配列(RARE)を介してRAにより活性化されることを示した。 2.pou2遺伝子は原腸形成後期に中脳と後脳に発現し、中脳後脳境界(MHB)と後脳の形成を制御する。この発現が主として遺伝子上流の2.1kb領域に制御されること、この内部にPou2が結合しうる4カ所のOctamer配列があり、これらが胚内で協調的に働いて自己活性化的に発現を維持すること、上流域にあるRAREを介してRAによる発現抑制を受けることを示した。 3.fgf8遺伝子の下流に存在する後期MHBエンハンサー領域の内部構造を欠失導入実験により検討し、2カ所あるPax2結合配列を介してPax2aが中脳及び後脳r1-r5で発現を活性化すること、28bp領域が中脳及び後脳後方での発現を抑制し、結果的にこのエンハンサーは後脳前端でのfgf8の発現を再現することを示した。またこのエンハンサーが他の脊椎動物でも保存されていることを明らかとした。 4.ENU処理魚の子孫について突然変異体スクリーニングを行い、中脳から後脳にかけて形態異常を示すaa6k変異体を単離した。表現型解析の結果、この変異体胚では脳形成異常の他、接触刺激に対する応答能の欠損、顎形成異常が見られた。連鎖解析によりaa6k変異が第3染色体に起きていることをまず示し、さらに詳細な連鎖解析により近傍の多型マーカーの同定に成功した。現在、周辺に存在する候補遺伝子について、aa6kへの関与の可能性を検討している。
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