研究概要 |
ステロイド膜受容体はその存在については25年前に示されていたが、実体がつかめないままであった。しかし、最近ついにその遺伝子配列がアメリカの研究者らによって報告された。我々も、そのステロイド膜受容体遺伝子(mPR)のキンギョホモログ遺伝子のクローニングを開始した。MPRにはα,β,γの3タイプが存在することがヒトやマウスのゲノム情報より明らかにされていたが、キンギョ卵巣cDNAライブラリーのスクリーニングの結果、キンギョ卵巣にはα,βの他、γ似ついては2タイプ(γ-1、γ-2)、計4タイプが存在することが明らかになった。このうちαタイプについて機能解析を進め、抗体を用いた解析で、卵の卵成熟誘起能とmPRα,タンパク質の発現量に相関がみられた事や、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの卵内への微少注入によるノックダウン実験から卵成熟の阻害率とmPRαタンパク質の減少が一致してみられたことからmPRαがキンギョステロイド膜受容体の一つであることが示唆された。さらにヒト乳癌由来の培養細胞株であるMDA-MB-231にαタイプ遺伝子を導入した遺伝子導入細胞株を樹立してキンギョmPRα分子のステロイド選択性、DESとの結合を調べたところ、この分子が卵成熟誘起ステロイドである17α,20β-DHPと特異的に結合すること、この結合をDESが比較的強く阻害することが明らかとなった。これらの結果はmPRα分子が卵成熟誘起ステロイドの受容体であり、卵成熟誘起におけるDESのターゲットがmPRα分子であることを示している。
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