我々は、Creリコンビナーゼ蛋白の作用により、体の色が緑色蛍光から赤色蛍光に置換することが期待されるトランスジェニック(Tg)カエルを樹立した。本研究では、このレポーター用Tgカエルを用いて、新たな細胞系譜の作製、並びに器官形成や組織の構築パターンを、立体的な3次元画像として視覚化することを目的とする。今年度は、Tgカエル由来の受精卵にCre mRNAを導入することで緑色蛍光から赤色蛍光への変換効率を調べ、Cre/loxPによるコンディショナルな遺伝子発現誘導系が両生類で機能するか検討した。 Cre mRNAの適性導入濃度を決定後、Tgカエル由来の4卵割胚の背側片側にCre mRNAを導入し、幼生にまで発生した個体について赤色に変換した細胞或いは細胞集団を調べた。現時点では均一な蛍光の変換は認められないものの、Cre mRNAを導入した卵割由来の一部の細胞において赤色蛍光が観察され、左右非対称な蛍光パターンが確認された。また3次元画像解析により、消化器官が全て赤色蛍光に変わった胚も見出した。今年度の研究によりCre/loxPによる遺伝子発現誘導系が両生類で有効であることが明らかとなった。しかし、Cre mRNA導入後、体の片側半分が全て赤色に変換した個体は認められていないため、より効率良く組み換え誘導を行う必要がある。また我々が作製したレポーター分子は、胚発生過程において遺伝子組み換えを容易に識別する上で有効であることが佐藤らによって報告された(Dev.Dyn.2005)。 今後本年度の研究成果を踏まえ、Creによる組み換え効率の条件をさらに検討し、左右非対称性を示す臓器(心臓・膵臓・脾臓)や神経細胞の左右を交叉した伸長パターン化について研究を進め、器官形成や臓器形成に、左右の領域がどの程度寄与するのか画像解析データを基に立体的な呈示方法で明らかにしたい。
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