研究課題
基盤研究(C)
ほ乳類において、次世代への遺伝情報の伝達を担う精子形成幹細胞の成立機構と、成体精巣内での挙動、更に、そこで働く分子機構を明らかにすることを目的として研究をおこなった。具体的には、マウス精巣において幹細胞を含む少数の細胞集団である未分化型精原細胞に発現する転写制御因子Ngn3(neurogenin3)に注目して解析を行った。生後一ヶ月以内の前思春期及び思春期において、未分化型精原細胞が出現、成立する過程を検討した。その結果、生後最初に精子を生み出す細胞は、Ngn3陽性未分化型精原細胞の段階を経ずに、前駆細胞gonocytesから直接分化型精原細胞を生み出すことが分かった。それに続く精子形成は、成熟期を通してNgn3陽性未分化型精原細胞から生み出されていた。この結果は、精子への分化には、幹細胞の段階を経ることが必ずしも必須ではないことを意味し、精子形成に留まらず幹細胞の生物学を考える上で興味深い。また、ngn3陽性未分化型精原細胞のうちのあるものは、幹細胞が枯渇しないように補充する役割を負っていることが示唆された。これは、長期間にわたって精子形成が維持されるために重要と考えられた。これらの研究成果は、現代日本で社会問題として定着してしまった感のある不妊(男性不妊)、あるいは、地球規模で今後一層大きな問題となって来る人口過剰(男性避妊の重要性)など、極めて重要な問題に対する対策につながる、基礎的知見を与えるものである。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (12件)
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