研究概要 |
本年度は以下のとおり研究を実施した。 1)HpTb遺伝子の転写調節領域の絞込み パフンウニ胚T-brain(HpTb)は,発生過程において小割球由来細胞特異的に,孵化胞胚期から原腸胚期にかけて一過的に発現する転写因子である。本研究では,ウニ初期発生における小割球の分化に関わる遺伝子ネットワークの解明を目指し,HpTb遺伝子の転写調節領域の解析を試みた。HpTb遺伝子の転写開始点より下流およそ7kbを4つの領域(A〜D)に分断し,それぞれの断片をHpTbプロモーターおよびレポーターのルシフェラーゼ遺伝子と連結した。これらの構築を胚に導入し,レポーター活性を測定したところ,D領域にHpTb遺伝子のエンハンサーが含まれることを証明した。D領域においてエンハンサー活性を担う部分を同定するために,5'および3'側から削った断片を作製し,HpTbプロモーターに対するエンハンサー活性をそれぞれ調べた。その結果,HpTb遺伝子のエンハンサー活性を担う領域を422bpに絞り込むことができた。 2)転写因子結合部位の変異による転写活性化に対する影響 エンハンサー領域中の転写因子結合サイトを探索したところ,複数のEtsファミリー転写因子結合サイトが存在し,そのいくつかは種間でも保存されていた。そこで,これらEtsファミリー転写因子結合サイトがHpTb遺伝子のエンハンサー活性に関与しているかどうかを確かめるために,エンハンサー領域に含まれるEtsファミリー転写因子結合サイトに様々な組み合わせで変異を入れた構築を作製し,それぞれのレポーター活性を測定した。その結果,種間でよく保存された2カ所のEtsサイトがHpTb遺伝子のエンハンサー活性に特に必要であることが明らかとなった。これらの結果から,PMCの分化過程において,HpEtsがHpTb遺伝子の発現を直接制御する可能性が示唆された。
|