平成17年度はマイクロアレイ法を用いて、Notchシグナルの下で働く転写因子XSu(H)2の新規標的遺伝子21個を検出した。平成18年度は、これらの遺伝子のNotchシグナルに対する応答性と原腸胚期の機能を解析した。 1.Notchシグナルに応答性を示す新規標的遺伝子の原腸胚期における機能の解析 XSu(H)2に応答性を示した21遺伝子のうち、Notchシグナルに応答しXnr2により転写誘導を受ける転写因子は4個であった。このうち原腸胚期に必須の転写因子をコードする遺伝子を同定し、ホモロジー検索の結果に基づきXenopus laevis ATF1(XlATF1)と名付けた。XlATF1の転写活性化部位を欠損したドミナントネガティブ分子は原腸形成を阻害し、中胚葉形成不良を引き起こした。これらの結果は、原腸胚期のNotchシグナルが新規標的遺伝子であるXlATF1を介して中胚葉形成に寄与していることを示唆している。 2.Notchシグナルに応答性を示さない新規標的遺伝子の原腸胚期における機能の解析 XSu(H)2に応答性を示した21個の新規標的遺伝子のうち、Notch非依存的でXnr2により転写誘導を受ける遺伝子としてXoct25およびXoct91を見いだした。Xoct25のプロモーター解析およびChiPアッセイにより、Xsu(H)2はXoct25のプロモーター上にあるSPS配列に直接結合して転写制御していることが明らかになった。これらの結果は、転写因子XSu(H)2がNotchシグナルとは別の因子と相互作用することにより、原腸胚期のXoct25/91の転写制御に関わり、原腸胚期の細胞の多能性制御に関わることを示唆している。 以上の結果は、XSu(H)2はNotchシグナル依存的および非依存的経路を経て、初期原腸胚期の細胞の発生運命を制御するという重要な役割を演じていることを示している。
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