哺乳類に特異的な胎生、恒温性、体毛などの形質と遺伝子の多様化の関係を探るために、ENSEMBLやNCBIのRefSeqから、ヒト・チンパンジー・マウス・ラット・イヌ・ウシ・ブタ・オポッサムそれにニワトリなどの外群となる脊椎動物のゲノム配列を取得し、網羅的な相同性検索を行った.これに基づいてファミリー分類を行い、予備的な2次データベースを作成した。本研究はパラログを多く含む遺伝子族の解析が目的であり、作成するデータベースは、既知のオーソログを基準としたものとは、その構成が異なる。現段階では、かなり緩やかな閾値を設定し、それよりも高い相同性を有すれば、オーソログであるかパラログであるかに関わらず1つのファミリーにまとめている。次の段階として、各ファミリーについてマルチプルアライメントを行い、分子系統樹を推定する。これについては、まだ全てのファミリーについては完了していない。終了したファミリーの中で、ケラチン、成長ホルモンなどにおいては、哺乳類における非常に多くの遺伝子重複が確認されている。また、これらの解析に重要な、精密で高速なマルチプルアライメントおよび分子系統樹の作成プログラムについても、九州大学医学部の加藤和貴助教授の協力により、開発および改良を随時行っている。今後、系統樹推定を完了させて2次データベースを完成させるとともに、遺伝子の多様化(重複・欠失)パターン解析などを中心とした研究を行い、形質進化と遺伝子進化の解析を行う。現在、単孔類であるカモノハシのゲノム計画が進行中であるが、このデータは本研究にとって大変有用なものであるので、配列が入手可能になり次第、これを含めた解析を行う。上記で得られた研究結果は、平成18年度中に学会等で発表を行い、論文化する予定である。
|