研究課題
基盤研究(C)
I:硬骨魚グロビン遺伝子の進化。メダカグロビンの遺伝子は極めて多様で、分子系統学的解析により成体型グロビン遺伝子クラスターA1と胚型グロビン遺伝子クラスターE1の、2つのクラスターとして存在していた。A1、E1はそれぞれLG19とLG8の染色体上にあった(Maruyana et al.,2004)。ゼブラフィッシュ、フグのデータベースより、それぞれのグロビン遺伝子を検索して解析すると、それらのグロビン遺伝子は、メダカのA1、E1に相当するクラスター構造をとっていた。また、E1クラスターの境界にはprotein14の遺伝子があり、そのイントロンの中には、ヒトαグロビン遺伝子座のエンハンサーとして機能しているHS40と相同の配列が存在し、GFPを用いた遺伝子導入実験より、メダカでも強力なエンハンサーとして機能しうることが分かった。硬骨魚の進化の過程でグロビン遺伝子は、遺伝子重複、転座、偽遺伝子化等、複雑な道筋を経ていることが明らかとなった(Maruyama et al.,2004)。II:硬骨魚孵化酵素遺伝子の進化。本年度は、ウミメダカFundulus heteroclitusの孵化酵素の単離・精製、酵素学的性格付け、および、遺伝子の構造を調べた。Fundulusの孵化酵素はメダカと同様にHCEとLCEの酵素系である。メダカとFundulusを用い、相互に卵膜分解を観察すると両HCEは特異性がなく両卵膜を膨潤するが、LCEは自種の膨潤卵膜のみを特異的に分解し、他種の卵膜には作用しないことがわかった。このことはLCEが卵膜の種特異的変異に応じて変異した結果であろう(Kawaguchi et al.,2005)。Fundulus HCEとLCEの遺伝子構造も、メダカと同様、前者はintron-less,multicopy遺伝子であり、後者は8-exon/7-intron構造をもつ単一遺伝子であった。ウナギ、ゼブラフィシュにはLCE遺伝子がなくHCE遺伝子のみであり、そのHCE遺伝子も前者は8-exon/7-intron、後者は3つのイントロンがない5-exon/4-intronの構造であった。すなわち、HCE遺伝子のイントロン消失は、ゼブラフィシュを含むOtocepharaでは段階的に、メダカやFundulusなどを含むAcanthopteygiiでは全てのイントロンが一挙に消失したと考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
FEBS J. 272
ページ: 4315-4326
Comp.Biochem.Physiol.B.Biochem.Mol.Biol. 140
ページ: 505-511