アブラナ科の作物ではカブモザイクウイルスに感染するとえそやモザイクといった病徴を生ずる。えそ病徴の方が農業上の被害が大きいことから、病徴が現れるメカニズムを解明し、病徴をコントロールする方法が求められている。これまでに、アブラナ科のモデル植物アラビドプシスを用いてえそ病徴が宿主側の遺伝子TuNlによって誘導されることを明らかにしてきたが、本年度の研究からさらに以下のことが明らかとなった。 1.カブモザイクウイルスの感染によってえそを起こした組織では細胞死と同時に過酸化水素の発生が認められる。 2.えその発現には病害抵抗性のシグナル物質の一つであるサリチル酸が関与しており、えその発現に伴って防御タンパク質遺伝子の発現も誘導される。 3.えそが発現している葉では、過敏感反応(HR)様細胞死のnegative regulatorとして機能している遺伝子の発現量が低下している。 4.えその発現は環境条件によって変動し、病徴自体が変化する場合がある。また、これに伴ってウイルスの局在性も変化する。 以上の結果から、カブモザイクウイルスの感染によって生じるえそは病害抵抗性反応の一つであるHRと同じタイプの細胞死であり、サリチル酸を介したシグナル伝達経路によって誘導されているものと考えられる。また、これまでにTuNlはR geneクラスター領域にマップされることが明らかになっており、TuNlがR geneである可能性が十分に考えられた。
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