研究概要 |
ウンカ耐虫性のQTL解析とウンカ耐虫性遺伝子に関する近似同質遺伝子系統(NIL)の育成については,日本型水稲品種台中65号とトビイロウンカ抵抗性を持つインド型品種ADR52のF_2集団を用いてQTL解析を行い,トビイロウンカ抵抗性に関与する3つのQTLを染色体5, 6, 12にそれぞれ検出した。さらに,BC_3F_2集団を用いた連鎖分析により,トビイロウンカ抵抗性に関する劣性遺伝子qBPH6を染色体6の短腕に,優性遺伝子qBPH12を染色体12の長腕に位置づけた。 NILを用いたウンカバイオタイプ変遷機構の解明については,累代飼育しているトビイロウンカ個体群3系統(1966, 1989, 1999年採集個体群)の,異なるトビイロウンカ抵抗性遺伝子を持つウンカ抵抗性判別品種とトビイロウンカ抵抗性遺伝子qBPH6とqBPH12をそれぞれ保有するNILに対する加害性を調査した。その結果,1966年個体群はいずれの抵抗性遺伝子に対しても加害性を持たず,1989年個体群はBph1のみに加害性を示し,1999年個体群はBph1とbph2に対して加害性を示した。一方,qBPH6とqBPH12を持つNILに対するトビイロウンカ各系統の加害性については,qBPH6とqBPH12をそれぞれ単独に持つNILに対して,1966年と1989年の両ウンカ個体群の加害性は弱く,1999年個体群のみが強い加害性を示した。しかし,両抵抗性遺伝子(qBPH6とqBPH2)を併せ持ったNILに対しては,いずれのウンカ個体群の加害性も弱かった。 NILを用いた殺卵・殺虫成分の単離・同定については,セジロウンカ産卵時の日本型イネの生理的変化を,benzyl benzoate(BB)生合成系を中心として遺伝子発現解析と代謝物分析の両面から調べ,殺卵機構の解明を目指した。あそみのりとNIL(qOVC+1-3,+5-1,+5-2)において,殺卵性物質BBが非産卵およびオス成虫吸汁加害を受けた場合には検出されず,セジロウンカ産卵を受けた場合に産卵6時間後より蓄積し液浸化形成が進むにつれてその量は増加すること,また,これに同調しBB生合成酵素benzyl alcohol benzoyl transferase(BEBT)の発現強度が増すことを確認した。
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