本研究では、近年のゲノムおよびESTプロジェクト等の進展に伴い、急速に蓄積された塩基配列データを活用した効率的な逆遺伝学的解析法を確立し、ダイズ遺伝子の機能を塩基配列情報に基づいた逆遺伝学的手法を用いて解明することを目的として、ダイズミュータントライブラリーの作製と酵母相同組換え系を利用した突然変異遺伝子スクリーニングシステムの構築を進めた。 特に本年度の研究では、X-線照射したダイズのM2世代を展開し、2万8千系統からなる種子ライブラリーおよびゲノムDNAライブラリーを作成した。また、このゲノムDNAを有効に使用するために、組換え型phi29ファージDNAポリメラーゼを大腸菌中で発現・精製し、これを利用してMDA法によりゲノムDNAライブラリーを増幅し、スクリーニングに用いるサブライブラリーを作成した。更に、昨年度開発した酵母相同組換え系を利用したスクリーニングシステムを用いて、いくつかの脂肪酸生合成遺伝子を標的遺伝子として、これらが破壊された系統のスクリーニングを行った。しかしながら、その過程で昨年度開発したスクリーニング用ベクター上に存在する短い相同配列がベクター自体の再構成を引き起こしていること、およびベクターが保持する選抜用マーカーと酵母染色体との組換えが生じることが明らかとなり、この問題点を回避するために再度ベクターおよび宿主酵母菌株の改良が必要となった。 現在、これらの問題点を回避するためのベクターの改良および酵母の改良がほぼ終了したところであり、本研究期間中に目的とする突然変異体は得られなかったが、今後のダイズ突然変異体研究に有用なリソースと新たなスクリーニングシステムを開発することができたと考えられる。
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