イネの収量を決定する主要因のひとつであるシンク容量について、1穂穎花数を中心として以下の研究を行った。 (1)アキヒカリとIRAT109のBC_1F_1由来の組換え近交系を湛水条件において栽培し、収量構成要素と、1穂穎花数を決定する分化・退化穎花数および穂型を決定する枝梗の数と配置を調査した。現在データを整理してQTL解析を行っているところである。 (2)1穂穎花数に対する環境要因や栽培条件の変動の影響を解析するため、前述のアキヒカリとIRAT109のBC_1F_1由来の組換え近交系を用いて、湛水条件と畑条件における比較、窒素施肥条件の比較(予備試験)を行った。湛水条件と畑条件において、収量構成要素に関与するQTLと1穂穎花数に関与するQTLの間の関係が変動することが認められ、環境条件に対する反応がQTLレベルで明らかにされた。また、窒素施肥条件の違いについても小規模な予備試験であったが、収量構成要素の反応の違いがQTLレベルで認められ、来年度に本格的な試験を行う予定である。また、移植時期の移動について熱研2号とガヤ由来の組換え近交系を利用して試験を行い、出穂期、茎数および気象条件との比較解析を行うため、現在穂形質について調査中である。 (3)10品種の特徴的な穂形質を持った品種を栽培し、過去10年間の穂サンプルとともに穂型および分化・退化穎花の調査を行った。現在、気象条件(気温、日射量、日長など)の変動との比較解析を行っているところである。 以上の結果を相互に比較検討し、QTLレベルの解析と実用品種における変動の様相とを総合してシンク容量と環境要因や栽培条件との関係における品種間の反応の違いおよび機構の遺伝的解析を行う予定である。
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