研究概要 |
本研究は,慣行の施肥方法で養液栽培したホウレンソウを,収穫直前に連続照明することによって植物体内の硝酸代謝活性を維持し,品質を保持しながら植物体内に残存する硝酸塩含量を低下させることを目的としている. 光強度150μEm^<-2>s^<-1>条件下の照明付きインキュベータ内で生育させたホウレンソウにおいて,収穫1日あるいは2日前から夜間照明をすることによって,夜間暗黒条件下で生育させたものに比較して植物体の硝酸塩含量が最大20%低下することを認めたが,夜間照明を行っても,目標値である3000ppmより高く,さらに硝酸塩を低減化させる条件の検討が課題となった.次に,連続照明処理による硝酸塩低減化効果をさらに高めるため,収穫直前の光条件(光強度および光質),温度条件(地温条件)を変化させて試験を行った.夜間連続照明の光質を,白色光を基本とし赤色と青色のLED光源を組み合わせて変化させた場合,連続照明を行わない対照区に比較して硝酸塩含量が低下するものの,白色光のみで連続照明させた区よりも高く,光質を変化させても硝酸塩低減化効果が高まることなかった.また,収穫7日前より,地温を10℃高め30℃とした試験区の硝酸塩含量は,20℃の対照区に比較して高まり,この傾向は連続照明を行っても変わらなかった.光強度400μEm^<-2>s^<-1>条件下の人工気象室内で生育させた場合,連続照明を行っても硝酸塩低減効果は認められなかった.連続照明による硝酸塩低減効果のある照明付きインキュベータは,光が側面から入射される方式のものであり,光が植物群落内に十分に透過されるが,効果のない人工気象室は,光が上部から照射される方式であり,植物体上部の光強度は高いものの植物体下部には光が透過しにくい.したがって,硝酸塩低減効果に影響を及ぼす要因は,植物群落内に透過した光強度であることが考えられる.
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