研究概要 |
前年度までに,ホウレンソウの収穫直前に夜間に照明を継続する連続照明処理を行うと可食部の硝酸塩含量が低下するとともに葉のアスコルビン酸含量が高く維持されることを明らかとした。本年度では,連続照明処理による硝酸塩低減効果を高めるため、連続照明処理中の光強度を2段階(150μmolm^<-2>s^<-1>:150PFD,400μmolm^<-2>s^<-1>:400PFD)に設定し,硝酸とアスコルビン酸含量の日周変動を調査するとともに,その他の品質の変化を同時に調査し,収穫直前の連続照明処理によるホウレンソウの高品質化の可能性について論議した. 硝酸塩含量は,光照射後徐々に低下し,光消灯後徐々に増加する日周変動を示した.連続照明処理によって光消灯時の硝酸塩含量の増加が抑えられたが,150PFDの方が400PFDよりも強い硝酸塩含量増加抑制効果を示した.アスコルビン酸含量は,硝酸塩とは逆に光照射後に徐々に増加し光消灯後徐々に低下する日周変動を示したが,400PFDの方が150PFDに比較して高く推移する傾向となった.また,連続照明処理によってアスコルビン酸含量は処理期間をとおして高く維持された.シュウ酸含量は,収穫直前の2日間で4〜10mg・g^<-1>DWで変動したが光照射・消灯による一定の日周変動は認められなかった.また,シュウ酸含量は,150PFDでは連続照明処理によってやや低下する傾向となったが,400PFDでは,連続照明処理の影響をほとんど受けなかった.クロロフィルとカロテン含量は,両PFDともに連続照明処理でやや増加する傾向となったが,その増加効果はさほど大きいものではなかった.以上より,連続照明処理によってホウレンソウの有効成分が上昇するとともに有害成分が減少し,品質が高まることが明らかとなった.しかし,連続照明処理中の光強度を高めても品質向上の効果は高まらなかったので,さらに効率よく品質を高める環境条件の探索が今後の課題である.
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