研究概要 |
1.緑化されたビル屋上(B試験地)での温熱環境測定および主観申告実験 京都市内のRC造3階建ビルの屋上庭園にある芝生,アスファルトおよびパーゴラ(フジ棚)の3地点で,2005年5月13〜21日,8月7〜15日,10月22〜30日,12月11〜17日の4回,温熱環境要素の計測を行なった。計測期間は7〜9日間であった。実験の主旨を伝えて同意を得た被験者(12〜20名)による主観申告実験も同時に行なった。温熱環境要素の内,気温とグローブ温度および日射量は冬季以外では各地点で異なり,夏季に,パーゴラ地点で他より低い値を示した。主観申告実験でも,夏季の温冷感及び熱的快適感はパーゴラ地点で,暑い側の得点が低く,熱的快適性でもすぐれていた。景観評価項目である開放感,緑量感及び好ましさは,見通しが良く緑の面積が大の芝生地点の評価得点が高くなった。気温,グローブ温度,SET*など温熱環境要素と熱的快適感の評価得点の相関から快適範囲を推定したところ,パーゴラでもっとも広く,次いで,芝生,アスファルト地点の順となった。 以上の結果,緑化形態の違いが屋上での温熱環境の物理量及び心理量に差を生じ,特に夏季の高温期にパーゴラ緑陰が快適性をもたらす効果が高いことが示された。 2.屋上緑化事例の詳細調査による評価実験の対象抽出 これまでに蓄積した屋上緑化事例のデータを整理し,評価実験の対象を検討した。一方,2005年4月1日の京都府地球温暖化対策条例の施行により,屋上緑化義務化が現実化したため,京都市内に見られる典型的景観4種類を背景とし,京都市内の屋上緑化の事例を参考に選定した4パターンの緑化形態を組み合わせた合計16種類の評価画像の作成を試みた。 屋上での緑化形態のデザイン材料として,地表カバー用グラウンドカバー,フェンスカバー用つる植物の育苗,生育予備実験を行った結果,屋上の強風下では付着型つる植物が付着後に剥離することなどが明らかとなり,今後の課題とされた。 本年度に予定したイギリス・シェフィールド大学での資料収集と実態調査は行なわなかった。
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