研究課題
植物における特異的な病害抵抗性反応である過敏感(HR)細胞死の詳細な分子機構を明らかにするために、当該細胞死を負に制御すると考えられるテロメラーゼの活性制御機構等について検討した。まず、タバコおよびイネの葉身に親和性または非親和性の病原細菌液(10^8細胞/ml)を注入接種した結果、親和性菌では接種8〜10時間後に一過的なテロメラーゼ活性の誘導が認められたのに対して、HRを生じる非親和性の組み合わせでは本活性が誘導されなかったことから、テロメラーゼは広く植物の罹病性と密接に関連していることが明らかになった。次に、hrcCを欠損することによりType III分泌装置の機能を欠失したPseudomonas syringae pv.tomato DC3000株(10^8細胞/ml)を野生型シロイヌナズナの葉身に注入接種したところ、野生型DC3000株の場合にみられる接種8時間後のテロメラーゼ活性の上昇は認められなかった。また、非病原性関連のエフェクター遺伝子群(avrRpm1、avrRpt2、arvRps4)を発現するDC3000株をそれらに対応するRPM1、RPS2、RPS4を欠損したシロイヌナズナの変異体に同様に処理した結果、HR細胞死が誘導される野生株の場合とは異なり、特異的なテロメラーゼ活性の上昇が認められなかったことから、当該分泌装置を介した本酵素活性の誘導機構が存在すること、上記エフェクターはその負の制御機能を持つことが明らかとなった。さらに、シロイヌナズナの培養細胞にテロメラーゼ阻害剤を処理した結果,急速なテロメア長の短小化と染色体の断片化を伴う細胞死が誘導されたことから,テロメラーゼは植物細胞の増殖維持とアポプトーシス様細胞死の抑制に寄与することが明らかになった。以上の他、シロイヌナズナにおけるアポトーシス抑制因子であるAtBI-1がHR細胞死の抑制に働くことを明らかにした。
すべて 2006 2005
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Biochim.Biophys.Acta 1763
ページ: 39-44
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102
ページ: 7020-7025